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水無月も過ぎて

 6月は、映画「修道士は沈黙する」を観て、酷暑のなかにやってきてよかったと思い、METのライブビューイングの「ルイザ・ミラー」で、シラーの文庫本を引っ張り出し、バーリ歌劇場の来日公演で、初めてバーリに行ったときに一緒だった友を偲び、ガザーレやメーリの舞台姿を回想しているうちに終わってしまいました。一大イベントの「安芸の旅」については、別項で記録としてとどめました。

 読んだ本でインパクトがあったのは、五木寛之著『孤独のすすめ』と小石川真美著『親という名の暴力』です。どちらも内容が全面的に首肯できるわけではなかったのですが、五木氏の高齢者の特権は「一人秘めやかに回想に耽ること」という一節は、そのとおりだと思います。ただ、最後に力説されている嫌老の風潮があるから老人も働けという意見は賛成できません。20××年に高齢者駆除法が成立して、一人駆除すれば1万円、おかげで医療費や介護費が減って、財政は豊かになり、出産祝いとして300万円支給されるので、少子化問題一挙に解消というグロテスクな漫画が若者に受けているというのですが、本当でしょうか。

 以下は、月末に調布音楽祭の深大寺の公演に行った時の雑感です。バスを乗り継いで、深大寺小学校で下車すると、東参道に面して、深大寺小学校の子どもたちが育てた蕎麦の花が咲いていました。

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  山門まで320mの道沿いに名物の深大寺そばのお店が並んでいます。帰りに「雀のお宿」という老舗のお蕎麦屋さんに寄ろうかなと思っていたのに、5時すぎには閉まっていました。

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 昨年、白鳳仏が国宝に指定されたので、地元の方は大喜びです。普段は公開されない本堂で今日はコンサートが開かれます。

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 本堂前の蓮の花もポンと音を立てて開くのでしょうか。

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 元三大師堂の左側に新しい建物ができて、国宝の釈迦如来像をしっかり拝めるようになりました。300円の志が必要ですが、以前のように薄暗くてはっきり見えないということはありません。向かって右に兵庫県鶴林寺聖観音像、左に奈良県新薬師寺香薬師像が安置されています。よくよく見たら、精巧な複製でした。

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 14時30分ごろに整理番号順に並べと言われて、炎天下に立たされるのはちょっと大変。次の機会があったら、どんな席でもいいから、あとから入ります。本堂の中は冷房が効きすぎて、羽織るものが必要です。15時から6人の院内僧侶による天台聲明の詠唱がありました、おそろいの衣と袈裟を身に着けた僧が3人ずつ向かい合い、ソロと合唱を交えた詠唱は、南チロルのモンテ・マリア大修道院の晩祷を思わせます。あの幸せな日のことは、いまもしっかりと刻み込まれています。

 15時30分から寺神戸亨トリオの演奏が始まりました。 こんなに演奏者と聴衆の距離感のないコンサートは初めてです。寺神戸氏のトークで、モーツアルトが鍵盤楽器だけではなくて、iヴィオラの名手だったと初めて知りました。

  • 寺神戸 亮(ヴァイオリン)
  • 原田 陽(ヴィオラ)
  • 懸田貴嗣(チェロ)
  • シューベルト:弦楽三重奏 第1番 変ロ長調
    Franz Schubert: String Trio No. 1 in B-flat major, D471

  • ボッケリーニ:弦楽三重奏曲 へ長調
    Luigi Boccherini:
    String Trio in F major, Op. 14, No. 6, G. 100
    I. Larghetto II. Allegro III. Rondeau con moto
  • モーツァルト:弦楽三重奏のためのディヴェルティメント
    変ホ長調 より 第1、4、5、6楽章
    Wolfgang Amadeus Mozart:
    Divertimento in E-flat major for String Trio, KV 563
    I. Allegro IV. Andante V. Menuetto VI. Allegro


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  •  苔だけではなくて草まで生えた茅葺の山門は、元禄8年(1695)に建てられた深大寺ではいちばん古い建物です。プログラムにバッハの生まれた年と10年しか違わないと書いてありました。

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     深大寺小学校前のバス停。こういう塀なら震度6の地震でも大丈夫でしょうね。

    スマートウオッチ

     三個目の歩数計が壊れて、買い換えようと思っていたら、スマートウオッチ(スマートブレスレット)なるものを知りました。価格帯も幅広くて迷いましたが、お値段も約1万円と手ごろで、歩数や血圧も測れる↓の商品を注文したら、すぐ届きました。受注や発送を知らせるメールから、微妙な違和感を感じたのが的中し、届いた商品の取扱説明書は虫眼鏡を使っても読みづらい中国語と英語で書かれています。

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     連絡したら、すぐに日本語の取説をPDFで送ってきましたが、QRコードをスキャンして、アプリをダウンロードしなければなりません。Andoroidの格安スマホは、旅先での緊急連絡以外はほとんど使っていません。まず、QRコードの読み取りアプリを取り込むところから始めて、本体を充電し、wearheartというアプリを開いたら、また中国語!ここでグッと血圧上昇。パソコンでノウハウを検索して、使えるようになるまで、ずいぶん無駄な時間を費やしました。

     それから一週間、これは便利です。心拍変動(HRV)、血圧測定、活動量計、歩数計、消費カロリー、電話の着信通知、LINE通知、座りすぎ注意、遠隔カメラ操作、時間や日付表示、気温表示等々、多機能で、操作も簡単で言うことなしです。ホームドクターから、朝晩、血圧を測って記録しろと仰せつかっていますが、腕帯を巻いて測定するのは面倒ですし、旅行中は無理。これならタッチパネルをタップするだけで、いつでも測れます。

     ちょっと驚いたのは、スマホのアプリを開くと、睡眠のデータが、棒グラフで出て来て、何時間寝たか、そのうち深い眠りは何時間で浅い眠りは何時間か、何時に寝て何時に起きたか、何回、目覚めたかがわかるので、気味が悪いほどです。

     最初は五里霧中で、夏休みになったら、娘か孫に助けてもらおうと思っていましたが、なんとかなって満足しています。いまの血圧は132と83です。

    プールでのお付き合い

     関節の手術を受けて8年たちました。理学療法士のお勧めでプールでの水中歩行を続けています。昨年の4月から新しいプールができて、いい点と悪い点が交錯していましたが、最大の問題だった滑る床は、年末年始の2週間の休館の間に手直しされて、やれやれです。

     週に2回から3回、1時間かけて歩いたり、泳いだり、水中ストレッチをしたり。ありがたいことに、旅に出ても、ほぼ問題なく歩けています。顔なじみの方も増えて、お話をしながら歩いていると、時間のたつのを忘れてしまいます。ところが、ここへきて、また問題が・・・。

     特定の曜日の午後、知的障碍者の施設の方が何人か来られて、歩いたり、泳いだりしていらっしゃいます。同じ時間帯に行きますので、数か月たつうちに、挨拶をかわし、世間話をするようになったのですが、今年になって、その中のお一人に「遊びに行きたいから住所を教えて」と言われて困惑してしまいました。お仲間と二人で来るおつもりのようでしたが、それは無理です。即答は避けて、申し訳ないのですが、今週から顔を合わせない時間帯に変えました。プールまで行く交通機関の制約もあるし、これまでの時間帯で生活のリズムができていたので、変更は残念ですが、一人暮らしですから、ご近所の業者さん以外は、お入りいただくわけにはいきません。他のプール利用者の方は、なんとなく避けていらっしゃって、それはお気の毒、差別しないで接しようと思うなら、きちんとした覚悟が必要だったと反省しています。

     もう一つは、スピーカーから大音声で流れてくる音楽です。先日は郷ひろみさんの歌が繰り返し流れていました。ドラムやシンバルが激しくなっている日もあります。泳いでいれば聞こえないのですが、歩いていると、もはや拷問。通販で耳栓を買ったら、かなり音量が減ったので、なんとかしのいでいます。

    高齢者の5タイプ(丸写し)

     

     以下は「KAIGO LAB編集部」が高齢者の性格を5タイプに分けて解説された文章の丸写しです。単純に分けられるものではなくて、複合型もあるそうですが、「転載を禁ず」とは書いてなかったので、自分自身を省みるために挙げてみました。

    1. 適応型;円熟型

    自らの老いを自覚しながらも、それによって活動意欲を低下させることがないタイプ。過去の自分を後悔することなく受け入れ、未来に対しても現実的な展望を持っている。老いによってできなくなることも、それはそれとして、新しい現実の中で満足を得られるタイプ。周囲が無理にアレンジしなくても、自分で自分の人生を進めようとするので、性格的な部分で、周囲が対応する負担が少ない。スマホのような新しい技術も、面白がって使えるようになる。

    2. 適応型;安楽椅子型(依存型)

    受身的に、消極的に老いを受け入れるタイプ。後は皆にまかせて、自分はのんびりという具合に、他人に依存しながら「気楽な隠居」であることを求める。積極的に新しいことには取り組まないが、誘われれば、新しい環境への適応もできる。性格的な背景から、生活不活性病にならないように、活動的な物事への取り組みをうながす必要がある。スマホのような新しい技術も、それが自分を楽にさせる便利なものであることが理解できれば、使いこなせる。

    3. 適応型;装甲型(自己防衛型)

    老いへの不安と恐怖から、トレーニングなどを積極的に行い、強い防衛的態度をとるタイプ。なんとか若い時の生活水準を守ろうとする。スマホのような新しい技術も、使いこなせないと恥ずかしいという心理から、受け入れようとする。責任感が強く、様々な活動を続けようとする。結果として無理をおし進めるリスクもあり、怪我などをしてしまうことも。性格的な背景から、本人の「まだまだ、現役だ」という自尊心を傷つけることなく、無理はしすぎないように注意する必要がある。

    4. 不適応型;自責型(内罰型)

    過去の人生全体を失敗とみなし、その原因が自分にあると考え、愚痴と後悔を繰り返すタイプ。典型的には、仕事に一生懸命だった反面、家族をかえりみず、現在は家族から相手にされない状況にあることを嘆くような高齢者。うつ病になりやすい。新しい技術にも適応しようとしない。いつまでも過去にとらわれることなく、反省すべきは反省しつつも、なんとか新しい関係性などを築いていく必要がある。

    5. 不適応型;攻撃憤慨型(外罰型)

    自分の過去のみならず、老化そのものも受け入れることができないタイプ。過去を失敗とみなし、その原因を自分ではなく、環境や他者のせいとして責任転嫁する。不平や不満が多く、周囲に対しても攻撃的にあたり散らすため、トラブルを起こす。高齢者として他者から親切をされても、それをポジティブに受け入れられない。周囲としては、どこまで献身的に対応しても感謝されることもないため、サポートすること自体が困難。

     周りを見回すと、この5タイプのいずれかに当てはまる人に思い当ります。できれば円熟型でありたいと願っていますが、さてどうなりますか。とりあえず、今年も掃除・買い物・調理で暮れそうです。

    元気創造プラザ

     わが町に元気創造プラザというあまり冴えないネーミングのスポーツ施設ができて半年を過ぎました。最新式のプールには、水中歩行専用レーンもできると聞いて、期待値は高まるばかり。4月の初めにいそいそと出かけました。

    Subaru

     欠点ばかり並べるのもどうかと思いますが、現実ですからしかたがありません。最大の問題は床の極めて滑りやすい構造でした。オープン早々転倒者が続出し、骨折→救急搬送→入院も複数。監視員でさえ、地響きを立ててすってんころり、という始末でしたが、急きょ、マットを敷いてしのいでいました。ロッカールームからプールまでの通路は手すりもマットもないので、壁に手を当てながら、こわごわ歩かなければなりません。

     そのほか、シャワーがいまどき珍しい固定型で、頭と肩、背中ぐらいしか清潔にできない、採暖室がプールの最奥でシャワーまで遠いので、ほとんど利用者がいない、等々。それにもまして「健康増進コース」と銘打って、メインプールの脇にわざわざ設置された水中歩行専用コースが125~135cmという水深であるため、水中歩行の大きな効用である筋力アップにつながらないのが非常に残念でした。水中歩行・水深で検索すると、胸ぐらいが推奨されています。利用者の身長差がありますから、いちがいに言えませんが、私の場合は100cmが理想です。やむをえず、120cmに設定されているフリーゾーンで歩いていました。

     嬉しいことに、7月になって、コースの変更があって、従来の「健康増進コース」は遊泳コースになり、メインプールの一部が水中歩行専用コースになりました。メインプールは水深の調節ができるので、100cmに設定され、やっと水中で関節の屈伸もできるようになって、喜んでいたのですが、夏休みが終わって、子どもたちが激減したら、水深が120cmになって、ガッカリです。

     新しいプールができて喜んだのもつかの間、さまざまな欠陥が噴出しましたが、利用者の苦情で改善された問題もあります。まず滑りやすい床が手直しされ、更衣室に時計も付きました。不思議でならないのは、多額の予算を使って、こうした施設を造るときに、専門的な知見を駆使したとは言えない状況が散見されることです。

     できるだけ自立して生きたいので、持病の高血圧や膝痛に霊験あらたかであるという水中歩行は続けたいと思っています。

     完成予想図をUPした元気創造プラザの一階と地階に綜合スポーツセンターがあり、プールは地階です。古いプールで親しくなった方が来られないので、どうなさったのか、みんなで心配していたら、地階までスロープで降りる構造が股関節に痛みのある方には無理だと知って、残念でなりません。そのかわりと言っては変ですが、火曜日の午後に市内の知的障害者の施設から5,6名の方が参加されるようになりました。最初はどう対応していいか迷っていましたが、「こんにちは」と声をかけたら、とても嬉しそうな「こんにちは」が返ってきて、気持ちが明るくなりました。

     土曜日の午後は赤ちゃんの水泳教室が開かれていて、20組の親子でにぎやかです。時代が変わったと痛感するのは、お父さんが半数近い! それもやらされている感はなくて、ご自身も楽しんでいるという風情はいいなと思います。

    姉と友と

    ナガミヒナゲシ

     路傍でオレンジ色の草花を見かけたのは、かなり前です。可憐な姿に惹かれ、我が家の庭にもきてほしいと思ったこともありました。ところが、この花は移植に弱いようで、いつも枯れてしまいます。今年、とうとう風に乗って、やってきました。喜んでいたら、ニュースで、この花は外来植物で繁殖力が旺盛なので、実をつける前に取り除いたほうがいいと知って、ちょっとガッカリです。

     名前もわかりました。ナガミヒナゲシです。

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      1961年に世田谷区で見つかって、2010年には青森県と沖縄県以外の都道府県で確認されているそうですから、いまは全国に分布しているかもしれません。

     スペインを鉄道で旅していると、線路沿いにアマポーラが群生していて、旅情をかきたてられたものでした。

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     ナガミヒナゲシのほうが少し色が淡いのですが、そっくりですよね。当地に越してきたころは、庭にムサシノスミレが自生していました。しばらくして、中央線の線路沿いによく見かけたムラサキダイコンがやってきて、いま路地で花盛りです。どなたかが中央線の線路わきにナノハナとムラサキダイコンの種をまかれたのが始まりと聞いたことがありますが、こちらは在来種だから、御咎めなしなのでしょうか。

     10年ほど前に関西の姉の家からいただいてきたナルコユリもいま涼し気な佇まいで、あでやかなツツジとともに食卓を飾っています。もう少したつと、いっしょにやってきたハンゲショウも姿を現すかなと心待ちにしています。ハンゲショウは絶滅危惧種になりかかっているそうですから、大事にしなければ。姉は一人住まいになってから、広い家をもてあまして、姪の家から3分の場所に移って、植物たちともお別れしたと言っていました。

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    いちばん寒かった冬

     独り暮らしの難点の一つは、家の寒さでしょうか。ついつい「もったいない」精神が頭をもたげて、我慢してしまいます。今年は冷え込みが強くて、大変な思いをしていらっしゃる寒冷地の方々に比べれば、とても恵まれていますが、朝は家じゅうが冷蔵庫のようです。

     私が体験したいちばん寒い冬は、日本が戦争に敗れた年の冬でした。当時は今より格段に寒く、外に干した洗濯物が凍ったり、屋外の水道管が破裂したり。着る物はスフ(スティープル・ファイバー)や人絹(人造絹糸)、電気は停電だらけで、石油ランプがおでましになり、燃料は薪も炭も僅かしか手に入らず、近くの里山で集めてきた枯葉を火鉢で燃やして、一瞬の暖をとったものでした。

     もちろん、食べ物は飢餓寸前でした。ときどき、食料品の放出情報が流れると、長蛇の列。たしか昭和21年の2月ごろ、昆布の佃煮が売り出されるという情報を得て、父に連れられて雪の中を何時間も並んだことがあります。その甲斐もなく、売り切れだと告げられ、幼心に情けなくて大泣きをしながら帰宅したのが、生涯でいちばん寒かった冬の日でした。

     その後、数年続いた飢えと寒さの記憶は、思い出したくないほど辛いものでした。暖房のある教室は一度たりとも遭遇していません。幸か不幸か、少しずつ暮らしが楽になって、今日よりは明日のほうがいい日がくると信じて生きてきました。たぶん、あれほど酷い生活は二度と経験しないで人生を終われそうです。

     ただ、最近の世情をみると、若い人たちの行く末が案じられてなりません。不快極まりない人物が得意満面で世界を動かそうとしているのを信じられない思いで見ています。

     気が付けば、1月も終わりそう。孫たちと楽しく過ごした年末年始のあと、春の短い旅のプランを練りに練って、宿の手配だけは済ませました。関西に二度、東北に一度、出かける予定です。

     

    今年の読み納め

     幼いころは、親の目を盗んで本を読み漁ったものですが、めっきり読書量が減りました。一つは視力の衰え、もう一つは絶好の読書タイムに充てていたプールの往復で利用するバスに酔うようになってしまったことが大きな要因です。要するに老化の現れなのでしょう。

     一人暮らしのいいとろろは、夜中にテレビをつけても叱られないこと。眠れなくて、たまたまつけたテレビに佐藤愛子さんが出演されていて、最近、『90歳。何がめでたい』という本を出版されたことや、高齢者の先達として仰ぎたくなるようないくつかのお言葉を聴きました。これまで全く関心がなかった作家さんですが、読んでみようと図書館に予約を入れたら、なんと99番目。しかたがないので、最新作にして、最後の小説とご本人がおっしゃる『晩鐘』を借りてきました。

     31歳のときに結婚し、15年たって騙し討ちのように離婚した男性が亡くなったという知らせを受けたところから始まって、なんとも理解不能な物語が展開し、ただただ驚いてしまいました。作中では麦彦と呼ばれる男性は、田園調布の広壮な邸宅で育ちますが、幼いころに罹った小児麻痺で片足を引きずっています。その生い立ちが人格形成に影響を及ばしたのかどうか、私には判断できません。同じような境遇の人が、同じことをするとは思えないからです。

     すでに他の作品で語られているように、麦彦は事業に失敗して、多額の負債を負い、作中では杉と名乗る作者自身を始め周囲の人にたいへんな迷惑をかけながら、悪びれることなく80歳まで生きました。凡人の私など、読んでいるうちに腹が立ってきますが、麦彦は尊敬されたり、愛されたり、全く不思議です。債権者から逃れるための偽装離婚だと言って、届を出させた直後に入籍した二度目の妻と麦彦と杉の間に生まれた娘に看取られて亡くなるのですから、やりたい放題をした人にしては、恵まれた最期です。

     これほどのスケールではありませんが、似たところのある人を知っています。作者が「明るい詐欺師」と名付けた麦彦のように、借金癖、虚言癖の塊のようでありながら、なぜか好かれる人でした。反省という言葉を置き忘れた人が世の中にはいるので、こういう人に出会ったら、全速力で逃げたほうが身のためです。

     テレビに出てきた佐藤愛子さんは、とても90歳を過ぎた方とは思えないほど、魅力的でした。娘さん夫婦やお孫さんと二世帯住宅で暮らしていらっしゃるようで、高齢者になって得をしたのは、やりたくないことはやらないで済むことだと言われています。私も見習いたいと思いますが、いまのところ、やりたくないことも少しはやっています。

     ただ、父親のことを洗いざらい書かれた娘さんはどういうお気持ちか、気になります。次に読んでみようかと思っている『血脈』には父の佐藤紅緑や異母兄のサトウハチローが登場するそうですから、作家の家族は覚悟ができているのかもしれません。爽やかな読後感とは縁遠いという予感がするので、新年そうそう読む本ではないと思います。

      たまたまですが、今年の映画の見納めとなった『この世界の片隅に』の冒頭で流れる「悲しくてやりきれない」の作詞をされたのがサトウハチローでした。ほとんど見たことのないアニメ映画ですが、40分前に行って、残席2の絶賛上映中。若い観客が目立ちました。辛うじて戦争体験のある者からすると、現実はもっともっと荒んでいたと言いたくなりますが、終わったあと、しばらく立ち上がれなかったという若い方の声は貴重だと思います。だいいち、あまりにもリアルな映画を作ったら、、満席続きにはならないでしょう。

    80歳の師走

     おせちを作り続けて50有余年、80歳になったらやめて、のんびり寝正月と思っていたのですが、まだやる気になっています。能力を少し上回るぐらいのことをたまにはやらないと、下降線を一直線でたどるのでは、という恐怖もあります。

     若かりし頃は仕事優先で、除夜の鐘を聴きながら掃除をしていましたが、いまは時間はたっぷりあるし、お掃除の一部はプロの手も借りて、少しずつ準備を進める毎日です。重い荷物を持って歩くのはドクターストップがかかっているので、丹波の黒豆、栗の甘露煮、塩蔵数の子など、日持ちのするものから買い集めて、暖房の入らない部屋に置いています。ネットスーパーや通販も活用し、根室の海産物や萩の蒲鉾、山形の日本酒などの手配も済ませました。今年は、遠祖の地、山形に行きましたし、ノーベル賞を受賞された大隅博士が手土産にされたという出羽桜・一路で盛り上がる予定です。某スーパーで獺祭をおひとり様一本限定で売っていたので、明日、買いに行きます。ワインは5本では足りないかもしれません。

     おせちの基本は、結婚したときからお世話になっている婦人之友社の「家庭の客料理」のレシピ。大学生の孫が田作り、高校生の孫がお煮しめの捩じり梅・松葉牛蒡・亀甲椎茸などの係を務めるのもいつのまにか慣わしとなっています。 

     よせばいいのに、脳トレのような説明図と格闘してランドリーラックを組み立てた後遺症で、さては圧迫骨折と思うほど背中が痛かったのもどうやら治まって、やれやれです。80歳まで生きているなんて思ってもいませんでしたが、それなりの楽しみを見つけられるのが幸せです。今年は臼杵や杵築、近江・越前、瀬戸内、十和田・奥入瀬、山形など、短いけれども実りのある旅ができました。来年も、暖かくなったら、あそこも、ここも、と密かにプランを温めています。

     少し気が早すぎますが、皆様、どうか良いお年をお迎えくださいませ。

     

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