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ロベルタ・マメリ ~ある夜に~

 私にとって、幸せな出会い上位3位に入る歌手がロベルタ・マメリ。2007年に目白バロック音楽祭で聴かれた方々のコメントを目にして、馳せ参じたトッパンホールでのラ・ヴェネクシアーナのコンサートは強烈でした。そのときは男声も入り、エマヌエル・ガッリも参加していましたが、マメリがアンコールで歌った「ニンファの嘆き」に魅せられたのです。2009年の新大久保でのリサイタルのときは折悪しく入院中。チケットを取ってくださった有難い方に支えられて、外出許可を得て、タクシーで往復した夜も忘れられません。その後も白寿ホールに2度行きました。

 身体の部品の経年劣化が著しく、夜の外出は控えているなか、2夜連続は暴挙かもしれません。先に15日の「ポッペアの戴冠」のチケットを入手したあと、カヴィーナ率いるラ・ヴェネクシアーナの弦楽とともに、その歌声を披露すると知って、矢も楯もたまらず、買ってしまいました。いや、もう大正解。ラ・ヴェネクシアーナが演奏するシンフォニアと交互に10曲を聴かせていただけたのは、なんという幸運でしょう。これまでの体験にも増して、純粋にマメリの歌声に全身を委ねることのできる得難い機会でした。

 モンテヴェルディのオペラとマドリガーレを中心に、メールラやカヴァッリなどの名曲を加えた構成で、ルネッサンスの王侯貴族といえども、こんなハイレベルの演奏は聴いていないかも、と自慢したくなります。大河ドラマの「軍師官兵衛」と同時代に、こんな美しい世界があったとは、目もくらむ思いです。 

  とりわけ、休憩後に歌われた数々の嘆きの深さ。悲しみの極地のような聖母が幼子キリストを待ち受ける受難を予見して歌う子守唄で繰り返されるpercheほど哀しい言葉があるでしょうか。ゴンザーガ公爵の長男の婚礼に際して作曲された「アリアンナの嘆き」は初演時に多くの貴婦人の涙を誘ったそうですが、愛する人に裏切られ、置き去りにされた女性の情念の激しさに身震いが・・・。長身のマメリの姿は気高い女神さながら、ドキッとするフォルテも、嫋嫋たるピアニッシモも、この世のものとは思えません。

 王子ホールという良い場所を得て、マメリの美しすぎる声といっそう深まる表現力に身も心も満たされた夜でした。アンコールで歌われた「ダイドーとエアネス」から「ダイドーの嘆き」、「リナルド」から「私を泣かせてください」で、もううっとり。一つ残念だったのは、「リナルド」の有名なアリアがまだ終わらないのに拍手をした複数の人のために中断されてしまったことです。あれはやめてほしかった! マメリも困った様子で、チェンバロを弾きながら指揮をしていたカヴィーナに合図をして、続けてくださったのですが、NHKの収録が入っていたので、放映の際は上手に編集してください。12月17日の朝6時からBSプレミアム「クラシック倶楽部」で放映との予告がありましたから、一人でも多くの方に聴いてほしいと切に祈っています。

 あまりの素晴らしさに前夜のオペラが霞んでしまいました。初めて「ポッペアの戴冠」を聴いたレッジョ・エミーリアの劇場やアモーレ役で好演したベルタニョッリを懐かしみながら、これはこれで楽しみましたから、言うことはありません。認めたくはないけれど、体力の低下は覆うべくもなく、行けただけでも幸せなのですから。

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ロベルタ・マメリ(ソプラノ)
クラウディオ・カヴィーナ(音楽監督/チェンバロ)
ラ・ヴェネクシアーナ
 エフィックス・プレオ(ヴァイオリン)
                   ダニエラ・ゴディオ(ヴァイオリン)
                   ルカ・モレッティ(ヴィオラ)
                   懸田貴嗣(チェロ)
                   アルベルト・ロ・ガット(コントラバス)
                   ガブリエレ・パロンバ(テオルボ)
                 キアラ・グラナータ(ハープ)

~ある夜に~

クラウディオ・モンテヴェルディ
 :オペラ「オルフェーオ」より ペルメッソの川から
                  ビアージョ・マリーニ:シンフォニーア(パッサカリア)
モンテヴェルディ:「音楽のたわむれ」より ああ、私は倒れてしまう
                  アレッサンドロ・グランディ:シンフォニーア
ジョヴァンニ・フェリーチェ・サンチェス:簒奪者にして暴君
モンテヴェルディ:「マドリガーレ集 第5巻」より
          シンフォニーア(こんなに素晴らしい響き)
ニコラ・フォンテーイ:エリンナの涙
モンテヴェルディ:「マドリガーレ集 第7巻」より
          シンフォニーア(チェトラの調べに合わせて)
                          :「マドリガーレ集 第7巻」より
          唇よ、何とかぐわしく匂うことか
***** 休憩 *****
モンテヴェルディ:「マドリガーレ集 第4巻」より
          シンフォニーア(私は泣き、溜め息をついた)
タルクイニオ・メールラ:子守歌
モンテヴェルディ:シンフォニーア(つれない娘たちのバッロ)
                          :オペラ「アリアンナ」より アリアンナの嘆き
        :オペラ「ポッペーアの戴冠」より シンフォニーア
                  フランチェスコ・カヴァッリ:オペラ「カリスト」より
              情熱をもやし、嘆き、涙して
                  モンテヴェルディ:オペラ「ウリッセの帰郷」より シンフォニーア
        :「マドリガーレ集 第8巻」より ニンファの嘆き

ロシアの聖歌と民謡

 風邪もようやく治ったようなので、昨日はユリア・ホタイ&コネヴェツ・カルテットのコンサートに行ってきました。コネヴェツ・カルテットは、ヨーロッパ最大の湖であるラドガ湖に点在する約600の島の一つ、コヴェネツ島の男子修道院合唱団員4名によって1992年に結成されます。ロシアには2度行きましたが、ラドガ湖もコネヴェツ島も初耳です。某旅行社の情報をコピペすると、「コネヴェツ島はラドガ湖の南西部、湖岸から6kmの距離に位置する。全長8km、幅3kmほどの島。  コネヴェツの名前は馬(ロシア語で「コーニ」)に似た750トンほどの大きな岩にちなんで付けられた。14世紀以前は周辺の村の住民の民間宗教の儀式の場であった。  14世紀末に東方正教が布教され、コニェフスキー聖母生誕修道院が設けられた。今も残るコニェフスキー修道院は重要な修道院で、  皇帝アレクサンドル2世や作家のN・S・レスコフ、I・S・シュメリョフ、詩人のF・I・      チュッチェフなどが訪れたことでも有名だ。島は修道院の管理下にあり、訪問するのには修道院の許可が必要なため、 訪問者が限られている」だそうです。下の地図の矢印の先がラドガ湖。

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 コンサートの第一部は、ロシアの修道院の伝統的な聖歌です。ロシア正教の礼拝堂には楽器を持ち込んではいけないそうで、おもに朝の礼拝で歌われる聖歌がア・カペラで演奏されました。余談ですが、ア・カペラは「 a cappella di Sistina(システィーナ礼拝堂で行われている演奏形態で)」からきているのだとか。これも知りませんでした。下の写真はフィンランドの教会での演奏場面です。日本公演では黒いスーツと蝶ネクタイ。12曲の聖歌のうち4曲に加わったソプラノ歌手のホタイも黒のドレスにすらりとした身体を包み、端正な美貌と澄んだ歌声はジョヴァンニ・ベッリーニの描く聖母のように清らかでした。音楽的にはかなり違いますが、天使が舞い降りるさまを描いたフレスコ画に囲まれて、南チロルのモンテ・マリア修道院の 晩祷を聴いた夢のような夕暮れが浮かんできます。 第一テノールさんは多彩な才能の持ち主で、チャイコフスキーのピアノ組曲「四季」から10月の曲の「秋の歌}をしっとりと弾いてくださいました。4名ともサンクトペテルブルク音楽院の卒業生ですが、修道士かどうかはわかりません。

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 第二部は色鮮やかな民俗衣装に着替えて、ポピュラーなロシアの歌が始まります。真後ろの方の寝息もピタリと止まりました。思い起こせば50年以上前、昼休みに民青のお兄さんのアコーディオンに合わせて合唱した「青年歌集」の歌には、ロシア民謡がたくさん入っていました。あのころは、いまのような世の中になるとは全く思わず、「若者よ、身体を鍛えておけ・・・」なんて吠えていたっけ。

 ところで、ロシア民謡というからには、伝統的に歌い継がれてきた歌かと思ったら、ほとんどが20世紀に入ってから作曲されたのですね。チラシの写真とは少し違って、グループリーダー兼編曲者県バス歌手ドミトリエフさんが赤、前列右の第二テノールさんが緑、とルパシカの色が入れ替わっていました。リーダーさんは顔の半分ぐらいが毛で覆われていますが、終盤になって、凄い美声で聴衆の度肝を抜き、水泳のバタフライのような腕の回し方をするお辞儀が可愛い方でした。

 これだけでも来た甲斐ががあったと思い、泣きそうになったのは、アンコールの「涙そうそう」。ホタイの透き通る声の美しさは極上のロシア風味の沖縄料理でした。アンコール2曲目の「黒い瞳」はショールを腰に巻いたホタイとドミトリエフのパフォーマンスも楽しく、想像以上の夜に感謝です。アンコールを聴かずに帰ると、もったいないですよ。これから各地を回って、11月には岩手県での2012年に続く復興支援コンサートで締めくくるということでした。

Julia

 だんだんブログが面倒になってきましたが、もうしばらく生存証明として細々と続けていきます。

フアン・フランシスコ・ガテル テノール・リサイタル

 
 本来なら3月に開かれるはずのリサイタルが、7月19日に実現しました。チケットを買ったのは半年以上前ですから、すっかり忘れて二重に買ってしまいましたが、そのおかげで普段とは少し違う展開に。公演が延期になったのは、ガテルがローマ歌劇場の「マオメット二世」のリハーサル中に階段から落ちて骨折したというのが理由でした。

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 二重買いが判明して、プールで知り合った音楽好きの方に声をかけたら、二つ返事で、行きたいとおっしゃいます。いつも車で来る人で、帰りは自宅付近まで送ってくださるそうです。待つこと4か月、やっとその日がきました。正装して舞台に現れたガテルは、チラシに載っていた写真(↑)よりは大人っぽくて、やや小柄。伴奏者のブログに、2歳のお子さんを含めて大家族で来日、と書いてありましたので、ある程度の予測はつきましたが、プログラムによると1978年生まれですから、もう30代後半です。

 プログラム

トスティ:「可愛い口もと」

ロッシーニ:「もし私の名を知りたければ」 歌劇「セヴィリアの理髪師」より

モーツアルト:「彼女の降伏こそ私の願い」 歌劇「ドン・ジョヴァンニ」より

        :「僕の恋人を慰めに行ってください」 歌劇「ドン・ジョヴァンニ」より

        :「なんと美しい絵姿」 歌劇「魔笛」より

ドニゼッティ:「なんと彼女は美しい」 歌劇「愛の妙薬」より

 休憩

ラミレス:「アルフォンシーナと海」

ディセポロ「告白」

モーレス「ブエノスアイレスの喫茶店」

ドニゼッティ:「人知れぬ涙」 歌劇「愛の妙薬」より

グノー:「この魅力」 歌劇「鳩」より

チレア:「フェデリコの嘆き」 歌劇「アルルの女」より

アンコール
クルティス「帰れソレントへ」
ソロサバル「そんなことはありえない」
グノー「この魅力」
 
名刺替わりのトスティに続いて、「理髪師」のアリア。うーん、これはフローレスと完全にかぶりますからね。モーツアルトの3曲は、私なりにブラボーです。「ドン・ジョヴァンニ」は好きなオペラで、国内外で何度も聴いていますが、ドン・オッターヴィオで満足した試しがありません。全力投球で気持ちの入った歌唱でした。
 休憩後のアルゼンチンの歌曲は初めて聴く曲ばかりでしたが、さすがです。 「アルフォンシーナと海」は46歳で入水自殺したアルゼンチンの女流詩人アルフォンシーナ・ストルニを偲んで書かれた歌曲で、歌詞の一部に彼女自身の詩も含まれています。「告白」はタンゴで、伴奏の斎藤さんもブラヴォー。
 グノーの「鳩」というオペラも全く知りませんでした。プログラム最後の「フェデリコ」の嘆き、全身を使って、切々と歌い上げて、いいしめくくりでした。伴奏者と抱き合って喜んでいましたが、この会館でこういう光景を見るのは初めて。やはりラテンというか南米の方ですね。
 アンコールが3曲あって、普通ならバスが混まないうちにとそそくさと退出するのですが、同行した友人が大熱狂して、サインの行列に並ばないと帰れないようです。列外で付きあっていると、可愛いお嬢さんと少年、奥様が現れました。奥様はイタリア語も話されるので、少しお話しましたら、普段はバルセロナに住んでいて、お嬢さんは2歳、上のお子さんは日本で言う中学生。夏休みなので、家族全員で来日です。友人は乗りまくって、サインはもらうわ、ツーショットで写真を撮ってもらうわ、興奮さめやらぬ様子。ファンクラブがあったら、入りたい、ですって。まあ、お誘い甲斐のある方で、気分よく帰宅しました。
 メチャクチャ好きで、地の果てまで追いかけたいと思っていたフローレスと比べてはいけないと、生で聴ける歌声を楽しみましたが、帰宅すると俄然、フローレスが聴きたくなりました。体調不良もあって、音楽が以前ほど楽しめなくなって悲しかったので、これは嬉しい兆候です。 
 
 
 

 「ホフマン物語」・・・蛇足

拙い感想を書きましたら、もっと詳しくというリクエストをいただきました。少しでも記憶に残したいと思って、画像を集め、しどろもどろな文を綴っていたら、9月14日の深夜(15日)に今公演がNHK・BSプレミアムで放映されるそうです。それなら、必死になることはありません。どうかその日をお待ちくださいませ。

 オペラ御殿の冒頭3段落目(7月21日現在)に棟梁さまの公演に対する簡潔な感想が載っています。ぜひご参照ください。

 http://www.h5.dion.ne.jp/~goten/mainmenu.htm

 1819年にドイツのケルンでユダヤ人の家系に生まれ、1880年に「ホフマン物語」初演を目前にパリで亡くなっオッフェンバックは、未完だったオペラが音楽学者によって、もとの姿に近づき、日本で多くの観客を魅了したと知ったら、喜ぶでしょうね。

 前稿にも書きましたが、初めて観たのは2003年、ウィーン歌劇場でした。ホフマン役はイタリア人のサバッティーニ。サントリーホールがホールオペラと名付けて、演奏会形式のオペラを上演していたころ、「シモン・ボッカネグラ」で来日して以来、何度か聞いていますが、だんだん声がなくなって、高音は息しか出ないと思っていたのに、このときは落魄感まんまんで、妙に感心したものです。

 次は2004年。ミラノ・スカラ座です。ジョヴァノヴィッチというテノールは最初で最後になりそうですが、冴えなかったという記憶しかありません。バスはペルトゥージが4役を演じ、メゾはガナッシが素晴らしい歌唱を聴かせてくださいました。オランピア役は、すでにウィーンで人気沸騰だったランカトーレが演じ、ミラノでも大成功を収めています。

 3度目の2006年のビルバオ公演は、あまりいい印象がありません。御曹司の演出家モナコは嫌いなタイプです。歌手はバーヨのアントニアがずば抜けていました。表題役のマチャドはいつも酒瓶を手に、すさんだホフマンを演じさせられ、最後は椅子という椅子を蹴り倒して幕ですし、ヴェネツィアの場面もチープでした。

 それ以後、このオペラに接する機会はなかったのですが、今回の公演は2003年にローザンヌで初演された「ケック校訂版」であることが注目を浴びています。ある方が「東京の聴衆にとっては未知の音楽の数々に面食らったのでは?」と書かれていて、これまで観たものはなんだったのか、気になりました。1881年の初演は、遺族に補作を依頼されたギローによって大幅に改編されたものだったそうです。その後も改編が繰り返され、1904年のモンテカルロでの再演時のスコアが「シューダンス版」として1907年に出版され、約100年にわたって上演され続けたということですから、これまで聴いた「ホフマン物語」は、「シューダンス版」だったのでしょうか。残念ながら、そこまで深く考えたことはありません。

 ところが、1970年にオッフェンバックの子孫の家から、大量の楽譜が発見され、1977年に「エーザー版」が発行されます。だれにでもわかる違いは、ジュリエッタの幕がアントニアの幕のあとになったことですから、観たのは「エーザー版」だったかも、という気がしてきました。さらに、1984年に、ずっとカットされていた譜面が見つかり、「ケイ版」発行。1993年にジュリエッタの幕のオーケストラ譜が発見され「ケック版」発行。だんだんわけがわからなくなってきました。いずれにしても、この公演が私にとっての決定版になることは間違いありません。

 Twitterの書き込みで、ペリーの演出は、ベルギーの画家レオン・スピリアールトの絵画にインスパイアされたと知りました。情けないことに未知の画家です。アントニアの幕で、渦巻きの映像が禍々しく映し出され、見ているほうも不整脈が起こりそうでしたが、スピリアールトの代表作「めまい」に描かれた、階段なのか螺旋なのか、高くせりあがっていく頂上に立つ女性の影や風にたなびく長いショールが表現する心象にも揺さぶられました。

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3幕の一場面

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「めまい」

 もう一作。「突風」です。後ろ向きの女性が手すりにつかまって見ている先にあるのはなんでしょう。やはり髪の毛かスカーフが強風でたなびいて、不安な気持ちをいっそうかきたてます。

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 ホフマンは恋した3人の女性は、すべて死んでしまいます。オランピアはもともと機械ですから、命はないのかもしれませんが、魔法の眼鏡をかけたホフマンにとっては生身の女性です。コッペリウスに壊された人形の首を抱いて呆然とするホフマンと首がない人形に必死で人工呼吸を施すオランピアの父で科学者のスパランツァーニの姿に笑ってしまいましたが、アントニアが禁じられた歌を歌って命を失うのは筋書とおり。でもジュリエッタまで死んでしまうのはちょっとびっくりです。

 3人の女性は、すなわちステッラだという設定ですから、ソプラノが4役を演じるのは自然の流れではあっても、大きな負担になるのは想像に難くありません。いろいろ言えば言えますが、まずは破綻なく歌い切ったチョーフィはブラヴァーです。ジュリエッタはもっと妖艶でなければ、などと言っても無理。それにヴェネツィアのコルテジャーナだとしたら、教養と気品を兼ね備えていなければならないはずですし。でも、ダイアモンドに目がくらむあたりは、お宮なみで品がありませんね。

 蛇足中の蛇足ですが、フランスではオランピアという名前は娼婦を意味するとか。そういえば塩野七生さんの『三つの都の物語』に出てくる高級娼婦の名ははオリンピアでした。あの小説を読んで、オスティア・アンティカに行こうと画策したのですが、ついに果たせませんでした。

 非常に場面転換の多い舞台でしたが、アントニアの母の唇が不気味だったのを除けば、どの場面も好きです。とりわけ4幕冒頭にオケピットから静かに聞こえてきた音と完璧にマッチしていたカーテンの揺らぎは忘れられません。

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 オッフェンバッハもユダヤ系、いま読んでいるツヴァイクもユダヤ系です。自伝である『昨日の世界』は、多くのことを教えてくれました。テオドール・ヘルツルとシオニズムのこともそうです。そして、いまガザで起こっていることをどう考えたらいいのかと。

 

 

 

 

「ホフマン物語」リヨン歌劇場来日公演

 もう一週間以上たってしまいましたが、まだ音楽が身体の中で鳴っています。体調が問題で、オペラを鑑賞する機会がめっきり減っています。それでも、この公演だけは絶対に行くぞとわざわざBunkamuraに登録して、発売当日にチケットをゲット。いよいよ公演が近づいてきて、幸いにも無事に生きています。かかりつけの先生にお願いして、痛みどめも処方していただきました。

 5日の初日をご覧になった方が絶賛されています。Twitterに得チケ情報が載ったので、思わず7日のチケットを買ってしまいました。S、A席が17000円とは、定価の半額以下です! 当日窓口で開演1時間前から先着順にチケットを渡すということなので、行列覚悟で1時間前に行ったら、行列もなく、後ろではありますが、拍子抜けするほどあっさり1階席がいただけました。

 「ホフマン物語」はウィーン、ミラノ、ビルバオで観ていますが、フランス語を解さない者には、日本語字幕付きの公演はありがたい。とくに今回のようにセリフがたくさん入るオペラコミック風の公演ですと、少々予習していってもチンプンカンプンな部分が多くなってしまいます。

 7日はホフマン役をレオナルド・カパルボが演じました。あとはプレミエキャストです。カパルボはプログラムの写真より遥かにチャーミング。まだ若く、チョーフィの相手役としては姉と弟のような感じでしたが、無理のない歌唱と洗練された動き、「あやしゅうこそ物狂おしけれ」といった風情の痛々しいホフマンを演じて、すっかり引き込まれました。

 この方、日本が気に入ってくださったらしく、Twitterに「Sayonara Tokyo! I will miss beautiful Japan and it's wonderful people. Arigato gozaimasu!」というコメントを残していかれました。すっかり怪しくなったイタリア語で極短のコメントを入れたら、Grazieと返してくださって感激。以下の3枚の写真はカパルボのHPから転載しました。

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 舞台はほの暗く、後方の席ではよく見えなっかた場面もあったので、9日の公演への期待がいっそう高まります。終演が10時35分、若者であふれる渋谷の喧騒を縫って帰宅したら、もう12時前。すっかり疲れましたが、久々の良質の音楽に心は高揚していました。

 さて、9日。発売開始を待ちかねてゲットした13列目というチケットでしたが、行ってみたら、8列が最前列で、実質6列目の見やすい席でした。後方では気が付かなかった部分もはっきり見え、予習?の成果で流れが把握できてよかったと思います。

 オペラ歌手のステッラが舞台に建っている間にホフマンが三つの恋を語るのですが、冒頭、ステッラがドンナ・アンナのアリアを歌い、モーツアルトの音楽がそのままオッフェンバックの音楽につながっていきます。今日のタイトルロールは、ジョン・オズボーン。確か、この方を初めて聴いたのは、ローマのコンサート形式の「ギョーム・テル」のアルノルドでした。そして、ミラノの「湖の女」。輝きのある声と楽々という感じの高音に魅せられて、三度目の機会を待ち望んでいました。意外とテノールが活躍するオペラは少ないので、この公演でオズボーンの力量をしっかり受け止めることができ、大満足です。

 相手役のチョーフィは、昔々、スカラ座の「愛の妙薬」にデヴィーアの代役で出てきたのを聴いて以来、何度も出会いがありましたが、今回の4役は最高の思い出になるでしょう。1日置きにあの大役ですから、3日目は少しお疲れ。5日と7日を聴いた方が7日のほうが出来がいいと言われていたし、5日と9日を聴いた方は初日のほうがよかったと言われていたので、7日に行ったのは正解だったかもしれません。額にしわを寄せた苦渋にみちた表情&歌唱というイメージがあったので、溌剌としたオランピアやカーテンコール時のフレンドリーな様子で、遅まきながら、新しい魅力を感じました。

 オランピアの空中浮揚は音の高低に合わせて上下したり、オーケストラ席の上まで飛来したり、最後にライトが当たって、種明かし。招待客はなぜか全員がメモ帳持参のジャーナリストです。

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 最初で最後かもしれないバス4役のロラン・アルバロ、素晴らしかった! コッペリウスが衣の下に目玉多数(上の写真の真ん中)は、後方ではよく見えませんでした。ミラクル博士は軽やかな身ごなしで神出鬼没。鈍重な肥満バスには無理でしょうね。とても魅力的な悪魔です。

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 4役のテノールのデュポアも大健闘。配役に隙がありません。バスの声を出したり、90度の開脚を披露したり、サービス精神も旺盛です。

 ミューズとニクラウスを演じたミシェル・ロジエは、素敵なズボン役ですね。この役はスカラ座のガナッシがいいと思っていましたが、すっきりとした腰回りは誰も追随できないでしょう。最後のミューズへの早変わりは、目の前でみても信じられません。

 全体に色彩は抑え目で、煙や炎、映像(目玉、不思議な渦巻き、アントニアの母)、影と光(とくに四角い鞄を持つコッペリウスの影、鞄を開けると不気味に光るコッペリウスの顔)、パネルや大道具の動き(3幕の階段の距離感、4幕の長椅子、4幕のカーテンの動きと揺らぎ)のセンスの良さに感動しました。台本の1幕はニュルンベルク、2幕はミュンヘン・・・と各幕ごとの場面設定よりは音楽と登場人物の心象風景を重視した舞台づくりにも共感を覚えました。

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 楽日のカーテンコールで指揮者の大野氏が変な眼鏡と付け髭、杖で登場して驚いたのですが、Twitterにいち早く載ったBさんのコメントで、作曲者のオッフェンバックの扮装であることを知り、その慧眼に敬服しました。見つけた写真、なるほどそっくりです。

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歌劇「ホフマン物語」
※全5幕、原語[フランス語]上演・日本語字幕付き
スタッフ

作曲:ジャック・オッフェンバック
台本:ジュール・バルビエ

演出・衣裳:ロラン・ペリー
演出協力:クリスチャン・ラット
衣裳協力:ジャン=ジャック・デルモット
台本構成/ドラマトゥルク:アガット・メリナン
舞台:シャンタル・トマ
照明:ジョエル・アダン
ビデオ:シャルル・カルコピーノ

指揮:大野和士(フランス国立リヨン歌劇場首席指揮者)

キャスト:
ホフマン:ジョン・オズボーン[7/5、7/9]、レオナルド・カパルボ[7/7]
オランピア/アントニア/ジュリエッタ/ステッラ:パトリツィア・チョーフィ
リンドルフ/コッペリウス/ミラクル博士/ダペルトゥット:ロラン・アルバロ
ミューズ/ニクラウス:ミシェル・ロジエ
アンドレ/コシュニーユ/フランツ/ピティキナッチョ:シリル・デュボア
ルーテル/クレスペル:ピーター・シドム 
ヘルマン/シュレーミル:クリストフ・ガイ
ナタナエル/スパランツァーニ:カール・ガザロシアン
アントニアの母:マリー・ゴートロ

合唱指揮:アラン・ウッドブリッジ
合唱:フランス国立リヨン歌劇場合唱団
管弦楽:フランス国立リヨン歌劇場管弦楽団

 

自分自身のための備忘録としてはまだまだ不十分ですので、今後も書き足していきたいと思います。 

『ラ・チェネレントラ』・・・METライブビューイング

 今シーズンは本作で終わりですし、絶賛コメントを見たので、重い腰をあげました。以前は渋谷で観られたのに、東銀座の東劇がいちばん近そうです。歌舞伎座に行くときも感じていましたが、銀座線から日比谷線への乗り換え、とくに帰りが苦痛です。初めて行くので、さっそく道を間違えて新橋演舞場のほうへ行ってしまい、ギリギリに駆け込みました。演目と配役は下記のとおりです。 

ロッシーニ《ラ・チェネレントラ》
指揮:ファビオ・ルイージ/ Fabio Luisi
演出:チェーザレ・リエーヴィ/ Cesare Lievi
出演:ジョイス・ディドナート(アンジェリーナ/チェネレントラ)/ Joyce DiDonato
   フアン・ディエゴ・フローレス(ドン・ラミーロ王子)/ Juan Diego Fl�・rez
   ルカ・ピザローニ(アリドーロ)/ Luca Pisaroni
   アレッサンドロ・コルベッリ(ドン・マニフィコ)/ Alessandro Corbelli
   ピエトロ・スパニョーリ(ダンディーニ)/ Pietro Spagnoli
上映時間(予定):3時間24分(休憩1回)
MET上演日::2014年5月10日
言語:イタリア語

 

 なぜでしょう。あまりときめきませんでした。神のごとく崇めていたフローレスの王子様、声も技術も素晴らしいディドナートの表題役、指揮はルイジなのに・・・。ディドナートはこの役はこれが最後、ルイジはこの曲は最初だそうです。フローレスのドン・ラミーロはペーザロで2回、バルセロナで1回。忘れがたいのは2000年にガナッシと共演したペーザロの舞台です。プラティコも健在でした。ほかのキャストでも観ていますが、最悪はニースの公演でしたね。日本ではボローニャの引っ越し公演と藤原歌劇団のとけっこう観ています。

 生でないからでしょうか。いいキャストをそろえているのに、どこか隙間風が吹いていました。まず演出が好みでないし。主役の二人以外はすべて白塗り、頬紅真っ赤なのは、ブッファとセリアに分けたつもりなのかもしれませんが、一緒にやっているんですから、簡単に分離できません。あ、合唱団のアフリカ系の方のメイクは例外でした。二人の意地悪姉さんの下品な演技や、脚が一本ないソファーから転げ落ちたり、アンジェリーナのポケットからはみ出ていたリボンがどんどん伸びて、ドン・ラミーロが登場人物をぐるぐる巻きにしたり、どれも笑えませんでした。

 初めて知って、ちょっと気になったのはアリードーロ役のピザローニ。ペルトゥージがやったときは魔法使いのようでしたが、ボロ着を脱ぐと、金色の羽根をつけた天使です。若くて細面の美男子ですから、昔なら追いかけたかもしれません。羽根で思い出しましたが、やはりMETライブのオスカルが羽根をつけていましたね。イカロスの画が何度も出てきて、なぜ? と思っていましたが、破滅的な恋に引き寄せられる国王を太陽に向かうイカロスになぞらえたのではないでしょうか。

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 10月から始まる2014-15の予告がありました。15年3月に上演される『湖上の美人』」は、フローレス、ディドナート、バルチェッローナ、オズボーンとスカラ座と同じキャストですから、これだけは行きたいと思います。どうやらまだ生きているつもりらしいわ、私。

METライブ「仮面舞踏会」・・落下するイカロス

 「仮面舞踏会」の実演は3回観ました。1回目は20数年前の藤原公演。2回目はパルマ。ゲルギエフ指揮のボストン版でした。このオペラは実際にあったスウェーデン国王の暗殺事件を題材にしていて、ヴェルディが作曲したころは検閲に触れるので、ボストンに舞台を移していたそうですが、最近はこの版はあまり上演されず、3回目のチューリヒ公演もスウェーデン版でした。 

 METのライブビューイングはあまり観ていません。METがなんとなく好きになれず、私にとっては神のような存在だったフローレスが出演していた「清教徒」「セビリアの理髪師」「オリイ伯爵」に足を運んだだけでしたが、渋谷でも観られると知って、行ってみました。ずっと心が疲れて、ヴェルディやプッチーニは重すぎ。最近は耳鳴りが激しくて、イヤホンも苦痛です。あれやこれやでオペラともすっかりご無沙汰でした。行ってみようかなと思ったのは、マルセロ・アルバレスを聴いてみたかったから。とくにファンというわけではありませんが、いまヴェルディを聴くなら、このテノールしか考えられません。チューリッヒで同じ役を演じたベチャワもなかなかのものでしたが。

 まだ解けていない雪道を恐る恐る歩き、渋谷の映画館に着いたときは、場内は真っ暗。手探りで席に座るとすぐ始まりました。幕に描かれているのは「落下するイカロス」。最も忠実な友の妻を愛し、自らを死に追いやるかのようなグスターヴォ自身のようです。ある場面では天井画になり、最後は画から抜け出したイカロスが上からぶらさがってきます。もとになった画はどなたの作品で、どこにあるのか気になります。

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 映画とはいえ、久しぶりのオペラだから何が何でも楽しむぞ、と意気込んでいたんですが、序曲から登場するオスカルの鼻下と顎の髭と踊りが気持ちが悪い。劇場ではここまではっきり見えないのでしょうが。歌唱は文句はないので、なるべく見ないようにしていました。

 政治には関心がなく、どこか人のいい国王をマルセロ・アルバレスは好演していました。3幕1場以外は出ずっぱりなのに、凄いスタミナです。妻を奪われたと思って、王を暗殺するレナート役のホヴォロトフスキーがデヴューしたころは非常に注目して、火災に遭う前のフェニーチェ劇場でリサイタルを聴いたことがあります。だんだん熱は冷めましたが、アメリカでは凄い人気です。↓ レナートと国王 20世紀に置き換えられています。

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 3幕1場↓が印象的でした。最初は右の壁に国王の大きな肖像が掲げてあって、レナートが床にぶん投げるんですけど、いくら崇拝する人物だからといって、自室に写真を掲げて日夜眺めるでしょうか。なにやら暗示的です。

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 3幕1場は狭い空間でしたが、2場は鏡を多用して、大きく広がります。上部にイカロス。瀕死の王にすべて許すと言われて、レナート以下、王を憎み、暗殺を企てていた人たちがコロッと改心するのは、なんともオペラチックです。

 幕間にインタビューがあって、指揮者や演出家、主要キャストが語りますが、1幕2場で登場する占い師が実在の人物だったとは知りませんでした。二人の男性に愛されるアメーリア役のラドヴァノフスキーはロシア人かと思ったら、アメリカ人だそうです。国王はアルゼンチン人、レナートはロシア人、オスカルは韓国人、美しい音楽を聴かせてくださった指揮者のルイージはイタリア人とインターナショナルです。これはMETに限ったことではありませんけど。

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演奏はこれまで聴いたなかでいちばん満足できましたし、演出もほぼ納得できました。とくにアメーリアは最初に観た藤原公演のときはサッチャー夫人みたいな歌手だったし、チューリッヒの公演も主演クラスでは聴きおとりがして残念だったのに比べて、まあ、いいかな。演出は、ある方のブログによると、これまでのMETの演出を真似て、からかっているのだとか。そうなると、日参していない者には理解不能です。

 慢性的な体調不良をかこちながら、行って、最後まで見られて、まだ余力があったことだけで喜んでいる、極めて低レベルの鑑賞でした。

 帰りに渋谷駅前からハチ公バスに乗って、松涛美術館に寄りました。シャガールの作品をもとにイヴェット・コキール=プランスが製作したタピスリーがメインで、シャガールのリトグラフや油絵もありました。↓の画像では判然としませんが、410cm×610cmの大作「平和」の左上に描かれているのは赤い翼のイカロスではないでしょうか。

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国立モスクワ・アカデミー合唱団

 良席が売れ残っていたので衝動買いしたコンサートに行く日の購読紙の日曜版に歌声喫茶の記事が出ていました。とっくに滅びたと思っていたら、新宿に健在だそうです。歌声喫茶には行ったことがありませんが、歌声運動の末端にいた経験があります。と言っても、2回生まで過ごした北摂の大学のキャンパスでお昼休みに民青の人が奏でるアコーディオンに合わせて、「若者よ」や「原爆許すまじ」、そしてロシア民謡などを歌っただけですが。民青が日本共産党系の青年組織だというこさえ知らず、今日よりは明日のほうがいい日が来ると信じていた、貧しいけれど幸せな時代でした。

 

 昼下がりに出かけたコンサートの第1部はロシア民謡で、「赤いサラファン」「トロイカ」など、数十年の歳月を経て、懐かしく聞きました。合唱団は思いのほか小規模で若い。男性9人、女性8人の編成ですが、ソロやデユエットを組み合わせて、楽しい構成になっていました。

 

 第2部は世界のアヴェ・マリアとクリスマスソング。ヘンデルの「ハレルヤ」は中学生のときに、さんざん歌わされてすっかり嫌いになっていました。音楽の先生が背伸びしすぎの曲ばかり選び、叱られながら死ぬほど演習しましたが、お蔭で「カヴァレリア・ルスチカーナ」の開幕の合唱や「アイーダ」の凱旋場面の合唱などは、心穏やかには聞けません。「ハレルヤ」もその一つで、やけくそになった男子が「腹減った、腹減った、弁当のおかずはなんだ」とこっそり歌っていましたっけ。

 

 プログラムの最後はカッチーニの「アヴェ・マリア」です。大河ドラマ「平清盛」で待賢門院の臨終場面で吉松隆氏の編曲で館野泉氏が演奏して以来、これまでに6回ぐらい使われて、とても気になっていました。カッチーニの曲だと聞いて信じていたし、会場で配られた解説にも「初期バロック時代を代表する名曲である」と書いてあります。ところが、帰宅して検索したら、「実際には1970年頃ソ連の音楽家ウラディミール・ヴァヴィロフ(1925-1973)によって作曲された歌曲である。録音も楽譜も90年代前半まで知られていなかった。出典が明らかにされず、現在入手出来る出版譜は全て編曲されたもので、歌詞がただ"Ave Maria"を繰り返すだけという内容もバロックの様式とは相容れない。ヴァヴィロフは自作を古典作曲家の名前を借りて発表する事がよくあったが、自身が共演しているIrene Bogachyovaの1972年の録音では「作曲者不詳」の『アヴェ・マリア』として発表していた。ヴァヴィロフの没後十年を経てCD録音されたMaria Bieshu(1996)やイネッサ・ガランテのデビュー盤(1994)では作曲者が"D. Caccini"と表記され、ジュリオ・カッチーニの作として広まった。以上のような事実はCDや楽譜の楽曲解説では言及が無く、現在一般にはカッチーニ作品と誤認されている」という記事が見つかりました。

 そのことをちらっとMIXIに書いたら、オペラ御殿の棟梁さまが、youtubeのカッチーニの曲を貼ってくださって、「本物のカッチーニの曲を聞くと、同じ作曲家どころか、バロック時代の作品ですらないとすぐ分かりますよ。試しにこれをどうぞ」というコメントをいただいて、さっそく拝聴、大いに不明を恥じたしだいです。

 

  この合唱団は、これから日本全国を回るようですが、メンバーがそれぞれかなりの力量で、若若々しく好感が持てました。

2012年11月25日(日) 午後3時開演
武蔵野市民文化会館 小ホール

出演
ロシア国立モスクワ・アカデミー合唱団
アレクセイ・ペトロフ(指揮)
リューボフ・ベンジック(ピアノ)
プログラム
【第一部:ロシア民謡】
母なるヴォルガを下りて
暗い森で
赤いサラファン
若い私を
月が去った
なんと奇跡のようだ
出かけましょうか
時は過ぎ行き
トロイカ
歌え、つばめよ
カリンカ

【第二部:世界のアヴェ・マリアとクリスマス】
J.S.バッハ/グノー:アヴェ・マリア
モーツァルト:アヴェ・ヴェルム・コルプス
サン=サーンス:アヴェ・マリア
ラフマニノフ:神の御母よ、喜べ
シューベルト:アヴェ・マリア
クリスマス・ソング:シェドリック、シェドリック
クリスマス・ソング:聖夜
クリスマス・ソング:サンタが街にやってくる
クリスマス・ソング:ジングル・ベル
ヘンデル:ハレルヤ
カッチーニ:アヴェ・マリア

アンコール
ロシア民謡:夕べの鐘
ロシア民謡:長生きの歌

カルミニョーラとアンタイ

しつこい風邪もほぼ治ったので、2週続けてコンサートに行ってきました。まず11月12日はカルミニョーラ。2年前のヴィヴァルディで魂を奪われたのですが、あの感動の再現とまではいかなかったのが残念です。三鷹で聴いたヴィヴァルディは演奏の素晴らしさはもちろんですが、その存在自体が心をとらえて、しばらく熱に浮かされていました。ベートーベンのヴァイオリンソナタ「春」は、高校生のころ初めて聴いたクラシック曲ですから、当時のことが蘇ってきて、平静ではいられません。辛いこと、哀しいことが多かったので。

 音楽を楽しむというよりは、やっと外出する気力・体力が蘇ってきたことが励みになった夜でした。

ジュリアーノ・カルミニョーラ (ヴァイオリン)
矢野 泰世 (フォルテピアノ)

モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ 第36番 変ホ長調 KV380 
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ 第5番 ヘ長調 Op.24「春」

・・・休憩・・・

モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ 第28番 ホ短調 KV304
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ 第4番 イ短調 Op.23

・・・アンコール・・・

モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ 第24番 ハ長調 KV296 全曲

モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ ヘ長調 KV377 第1楽章

 1週間後の19日、ほとんど予備知識もなく、チェンバロのリサイタルを聴きに武蔵野市民文化会館に出かけ、とても贅沢な時間に恵まれました。チェンバロのリサイタル自体、あまり経験したことがなく、何かを語る力はありませんが、素直に感動できたのは嬉しい限りです。

 ピエール・アンタイ氏は少し風変わりで、鍵盤の脇に照明器具を付け、椅子の下には前傾するような楔が置かれています。主催者のブログによると、椅子の上のクッションも含めて、ご持参の愛用品だそうです。会場でいただいたプログラムノートに、不眠で悩んでいたロシア貴族が毎晩チェンバロ奏者のゴルトベルクに弾かせていたのがバッハのゴルトベルク変奏曲だと書いてありましたが、全くの素人の私がため息が出る思いで聴いているのに、右隣の男性が眠りこけて凭れてくるのには閉口しました。

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 プログラム

ヘンデル:組曲 ニ短調 「忠実な羊飼い」より
ヘンデル:組曲 第1番 イ長調 HWV426
ヘンデル:組曲 第2番 ヘ長調 HWV427

・・・休憩・・・

J.S.バッハ:ゴルドベルク変奏曲 BWV988

・・・アンコール・・・


J.S.バッハ:イギリス組曲第4番 ヘ長調 BWV809 - プレリュード
D.スカルラッティ:ソナタ ヘ長調 K.151

 

花咲けるイタリア・バロック音楽

体調不良が続き、鬱々と暮らしていましたが、なんとか気を取りなおして、武蔵野市民文化会館に行ってきました。音楽そのものよりも、出かけられたこと自体を喜んでいます。15時開演というのも、楽でしたし。

この一ヶ月、リハビリ以外はこれといったこともやっていないのが、余計に自分の不甲斐なさをかこちさせましたし、聞こえてくるのは悲しい知らせばかり。道を歩けば、出会った知人は名乗られるまでどなたかわからないほど変貌していらっしゃる。

帰りは何軒かのお店に寄って、懸案事項を解消したり、買い物をしたり、少しずつ気力が戻ってきました。

2012年10月14日(日)15時開演

武蔵野文化会館小ホール

出演

マリーナ・バルトリ(ソプラノ)

アレッサンドロ。ベルメリ(チェロ)

クラウディオ・アストローニ(チェンバロ、オルガン)

プログラム

ソプラノ、チェロ、チェンバロ)トッカータイ短調(チェンバロ)

A.ストラデッラ:カンタータ 距離と嫉妬(ソプラノ、チェロ、チェンバロ)

B.ストロッツィ:わが心は恋に狂い(ソプラノ、チェロ、チェンバロ)

A.スカルラッティ:チェロと通奏低音のためのソナタ ニ短調(チェロ、チェンバロ)

A.ヴィヴァルディ:愛よ、お前の勝ちだ (ソプラノ、チェロ、チェンバロ)

・・・・休憩・・・・

A.ストラデッラ:愛しい自由(ソプラノ、チェロ、チェンバロ)

A.ストラデッラ:恋するのは狂気(ソプラノ、チェロ、チェンバロ)

T.メルーラ:おねんねの宗教的カンツォネッタ(ソプラノ、チェロ、オルガン)

B.マルチェッロ:チェロと通奏低音のためのソナタ ト短調(チェロ、チェンバロ)

B.ガルッピ:トッカータ ニ短調(チェンバロ)

A.ヴィヴァルディ:カンタータ 見つめた時に(ソプラノ、チェロ、チェンバロ)

・・・・アンコール・・・・

ヴィターリ:トッカータとルッジェーロ(チェロ、チェンバロ)

ナポリ民謡:「カンツォーネ・アノ=マス(ソプラノ、チェロ、チェンバロ)

 3人の演奏家は同じメンバーで何度も共演しているらしく、息がピッタリ。チェロの恰幅のいい方やソプラノさんは立ち位置や登場の仕方を工夫していらっしゃいます。ソプラノさんは高音がかん高くて、ちょっと好みではありませんでしたが、メルーラのカンツォネッタの中音が美しく、マリアの苦悩をドラマチックに表現していました。魅せられたのは鍵盤楽器を奏したアストローニオです。ガルッピのトッカータを聴いていると、ヴェネツィアでガルッピの「ロリンピーアデ」を観た幸せな日が蘇ってきて、胸に迫ります。この方、なかなかの日本通だそうで、和食が大好物とか。アンコールのとき「アリガトウゴザイマス」と言われて拍手を浴びていらっしゃいました。

 このブログも長く開店休業でしたが、今後も続けるかどうか考えてみます。ご心配いただいた方、申し訳ありません。